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(1) 普通科生徒の栽培実践と教育的効果
(2) 高校生の「心の居場所」と園芸植物
(3) 学びを生かす「農業教育と園芸療法ボランティア」
出典 『農業学習の教育効果に関する総合的研究』
執筆 深澤 眞悟(山梨県立農業大学校、前・山梨県立農林高等学校)
協力 日本農業教育学会

3 生徒と病院側へのアンケート調査

(1)参加生徒の回答と積極性

 これまでに参加した生徒からアンケート調査をとってきた。98年から02年までの高校3年生を中心とした56名(男子17、女子39)である。
 この取り組みに参加した志望動機を図1に示す。学んでいる「園芸を生かす」「福祉に興味がある」「ボランティアに関心がある」「進路選択の参考」というのが上位にあがっている。この取り組み自体が、生徒の自主性に任されている点からも、意欲的な参加動機となっている。
 図2は、実践しての満足感についての調査である。このボランティアに参加しての満足感は、「よかった」という回答が多数を占めており、この取り組みの意義を十分に裏付けている。農業高校生にとっては、この取り組みが園芸活動を媒介とすることでボランティアへの参加への心理的な障害が低くなっているということも考えられる。
 図3は、満足感についての要素分析である。「患者さんとの交流」「医療福祉現場を知る」「人の役に立てた」が高く、「学びが役立った」「進路選択の参考」は回答が少なかった。この体験はリアリティのあるものであったため生徒たちの感性に与えた影響は大きく、人と人との交流により「人の役にたてた」という実感が正直にあらわれている。「学びが役立った」という回答が少ないが、これは学びの不十分さを実感することで、個々の生徒にとっては新たなる学びへの意欲喚起となっている。
 図4の、学ぶ意欲の必要性を感じたかという質問項目では、多くの生徒が学ぶ意欲の向上を回答している。
 これらのことから、とかくボランティア的活動は人格的向上や徳育的教育として捉えられているが、学ぶ意欲を喚起するという点に注目すべきであると考える。
 ボランティアの必要性については高く認識されている。また、社会に出てから実際に行いたい、機会があったら行いたい、という肯定的な回答が90%を超えていた。
 これらの回答からみると、生徒の自主的な選択による取り組みであり、意欲的な生徒の参加率が高いため積極的にとらえる傾向が見られる。校外学習として教科的な関係をもたせ、農業や園芸を媒介してボランティア学習が行えるという点で、農業教育に内在するキャパシティの大きさを実証する実践例であろうと考えている。
 
図1 園芸療法を選択した理由(複数回答)
図2 園芸医療ボランティアの満足感
図3 満足感の要素分析
図4 学ぶ意欲が高まったか
 
図5 ボランティアを必要と思うか
 
図6 社会にでておこないたいか
   
 この療養型病棟は、脳性疾患にともなう肢体不自由・言語障害、パーキンソン病、神経痛、リュウマチなどの病状の方で、高齢者が多く車椅子利用者がほとんどである。女性が9割ぐらいである。病棟の中庭約250m2が園芸セラピーの場になっている。中央には手作りのレイズドベッド(高設花壇)がつくられ、車椅子でも出られるように舗装がしてある。近くにはクヌギの雑木林もあり、将来は道をつくり車椅子でも散策できるように計画を立てている。私たちボランティアの受け入れの窓口になっている職員は、事務長、看護婦長、鍼灸師、ケアマネージャー、ケースワーカーである。長いつきあいとなり、意思の疎通も十分である。病院側は、長期入院者のストレスの緩和、気分転換といった園芸のもつ効果に着目し園芸セラピーを取り入れた。病棟から出て太陽の光を浴び、外気を吸い園芸を楽しむ。中庭の花を見ることで花の美しさや四季を感じる、これまでの病院では考えられなかったことを実践している。

(2)病院側の意見

 この高校生たちの活動を、受け入れ側の病院ではどのように見ているか。ケアマネージャー、看護士、介護職員など生徒と関わりあいの深い職員を対象としたアンケートを行った。高校生の受け入れについては病院側も慣れており、さほど負担とは感じてはいない。高校生ほどに成長してくると、ボランティアとして十分に期待されるようになる。しかし、社会人の目から見ると高校生に改善をしてもらいたいという意見も多い。特に積極性やコミュニケーション能力の向上が指摘されている。「生きる力」という点で、この部分の力を伸ばす努力が求められている。

4 新しい学びをつくりあげる

 この園芸セラピー・ボランティアへの生徒の参加率は高い。ボランティア(Volunteer)とは、ラテン語のVoloに由来し、「自ら意志をもって行動する」「喜んで何かをする」という意味であり、自発性を尊重するのが基本である。教育活動は強制の要素を当然もっており、高校生段階では特に自発性を発揮させる要素とのバランスがポイントである。幸いにも5年間続いてきているのは、社会のボランティア意識の高まりと同じように、高校生にも同じ傾向が着実に生まれてきているからである。そして、園芸のもつ新しい可能性に期待をもっているのである。学んでいるもの、自分のもっている知識と技術を生かす意欲が潜在している。この取り組みは、一般の人も入った市民ボランティアとの連携という特色をもっている。この活動は、生徒の社会性を豊かにし、学校では得られない学びの場となり、新しい可能性や能力の開発という点でも強い働きをもっているように感じる。
 これまでに病院に3名の卒業生が介護職員として採用された。ボランティア活動によっての好縁である。現在は、一人前の介護職員を目指して一生懸命働き勉強をしている。何年後かには、一人前になり介護と園芸に詳しい職員へと成長するであろう。全国的にもこのような事例が高校生や大学生に出始めていると聞く。園芸セラピーも着実に根を張り始めているように感じる。そしてボランティア活動、ボランタリー活動が、社会貢献事業として福祉施設・NPOやコミュニティ・ビジネスを発展させるだろうと予想され、園芸セラピーの果たす役割もいっそう大きくなると考える。  
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