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(1) 普通科生徒の栽培実践と教育的効果
(2) 高校生の「心の居場所」と園芸植物
(3) 学びを生かす「農業教育と園芸療法ボランティア」
出典 『農業学習の教育効果に関する総合的研究』
執筆 吉田 宏(奈良県立御所東高等学校教諭)
協力 日本農業教育学会

4 農場の管理

 当時、農場の面積は、1,269m2であった。温室2棟、鉢置き場、畑、日本庭園、堆肥置き場、資材置き場、果樹園とひととおりあり、小規模の農業高校と変わらない規模である。なお、現在は郡山城周辺の遊歩道整備により農場の一部が削られ面積は減っている。
 日常の主な管理は、「草花」担当の教諭1名と実習助手1名で行っている。また、平日の放課後や休日の時間外実習の指導は全教科の教員が交代で当たっている。専門外の教員も時間外実習の生徒を指導することになるので、年に数回、研修会を実施している。
 生徒の時間外実習は先にも述べたとおり12時間行っている。定期考査時間中や冬季を除き、ほぼ毎日、交代で実習を行っている。この実習では、農場の管理はもちろんのこと、校舎内外に鉢やプランターを設置し、常に周囲に花が咲き誇っている環境作りを行っている。

5 生徒の反応

(1)草花(1年:時間外実習を含む)

 毎年、年度末に栽培学習に対するアンケートを実施した。アンケートにはこちらから選択肢を与えて答えてもらうものではなく、自由に意見や感想を書いてもらうものとした。集計は「栽培活動の教育的効果」(文献1)をもとに分類し、複数にまたがるものについてはそれぞれに数を含めた。
図1 第1学年草花アンケート結果
社会性
持って帰ったハクサイはたいへんおいしかったです。おじいさんが特に喜んでくれて、今度は自分の畑でハクサイを作るように言われました。
大きくなりすぎたキュウリを持って帰ったとき、おばあさんが炊いて変わった料理を作ってくれました。おばあちゃんの郷の料理だそうです。おいしかった?かな。
母がいつも誉めてくれないのに、野菜を持って帰ったときだけは誉めてくれました。でも三者懇談の収穫は複雑です。怒られて誉められて・・・。
親戚中集まって鍋パーティーになってしまいました。父は僕が作ったことを親戚中に自慢していました。でもハクサイばっかりの鍋はもう嫌です。肉も食べたかったです。先生、堀にやってきた鴨捕まえてください。
やさしさ・情操性
野菜は放っておいてもできるけど、世話をすればするほど、いいものがたくさん採れるので2学期のハクサイ栽培は特に世話をしました。害虫捕りがたいへんでした。
あの小さな種から4kgものハクサイができるとは思いもよりませんでした。害虫を丁寧に駆除した人とそうでない人との差があまりにも大きかったので驚きました。
一株からキュウリが30本も採れるとは驚きでした。でも曲がったキュウリが多くて実際には売り物にならないものが多くて、食べられるのにもったいない気がしました。
自主性・責任感・集団性
いつも学校が花いっぱいなのは、自分たちの力なんだなと思いました。最初は普通科高校なのに農業の授業があって農場当番まであるので嫌だったのですが、こうして1年たって花を見ているとなんとなく気持ちが良くなってきます。
秋の寒い中の実習は最悪でした。僕の時は堆肥の材料になるというので落ち葉集めをしました。先生も一緒になってどろどろになってたくさんの落ち葉を集め堆肥置き場まで集めました。終わってみると落ち葉で一杯だった渡り廊下がすっかりきれいになり、次の日いろんな先生に誉められてちょっと嬉しかったです。
社会性・地域性
農家の人はどうやって生活しているのですか。苦労してつくったハクサイがお店でたった150円、安過ぎます。
「有機無農薬栽培の野菜がいい」と母は言いますが、たった二株のハクサイの害虫退治すら大変なのに農家の人は無農薬で育てる場合はどうするのでしょうか。
あの曲がったキュウリ、お店で売ってないけど、農家の方はやっぱり捨てているのでしょうか。もったいない気がします。
APJで老人ホームでキュウリを育てた時、おじいさんが一生懸命アドバイスしてくれました。学校で習ったことと同じだったけど、あまりにも一生懸命なので「今度、学校に来て教えてください」と思わず言ってしまいました。
科学性
ハクサイの成長の仕方をはじめて知りました。僕は一度開いてから丸くなると思っていたのですが、全然違いました。
キュウリの子づるをきちんと摘んでいる人とそうでない人で、こんなに病気の差が出るとは思いもしませんでした。
農場に出ているといろんな生き物に出会います。いかにも自然の中で農業をしているという感じでした。中でもキュウリを食べるカメにはびっくりしました。先生も気になっていたらしくカッパがいると言っていましたが、まさしくそのとおりだと思いました。
技術性
当番でクワを使っていると腰が痛くて仕方ありませんでした。先生に何度か教わったけど上手く持てません。
当番実習で刈り込みをしました。何かバカボンのパパみたいで面白かったです。でもきれいに切るにはいろいろとコツがあって難しかったです。バカボンのパパは実はすごい人だったのですね。
計画性
気が付いたらすぐに大きくなり世話が遅れ、病気かなと思ったらあっという間に病気が広がり、とにかく前もって作業をしなければならないものだなと思いました。

(2)草花(3年)

 毎時間に実習のまとめを提出、その時に合わせて感想を記入してもらった。選択授業のため人数も少ないので、主だったものだけを紹介する。
   今日はゴムの木の取り木をしました。環状葉剥皮は最初難しかったけど、数をこなしているうちにするっとうまく皮が剥がれるようになりました。でも舌状剥皮の方は力が入り過ぎて何本か完全に切ってしまい難しかったです。
オウゴンコノテヒバの刈り込みは難しかったです。ちょっと気を緩めると刃先が奥に入ってしまい、穴を開けたようになってしまいます。後半疲れてきて刈り込みバサミが重く感じるようになってきたときは特に穴を開けてしまわないか心配でした。

(3)園芸部

 活動記録より幾つか主だったものを抜粋して紹介する。
   学校で育てたトマトはたいへんおいしかったです。水やりしながらこっそり食べてしまいました。
文化祭での焼き芋販売は好評で良かったです。でも自分たちももっと食べたかったです。
メロンが植木鉢でなったのには驚きました。小さかったけどおいしかったです。

(4)APJ(城内奉仕団)

 活動ごとに感想を書いてもらった。主だったものを紹介する。
   お年寄りの方がいきいきとしていて驚きました。教わることもたくさんありました。たくさんの知識を持った人がたくさんいて、もったいない気がしました。
ドングリのコマは子どもたちもたいへん喜んでよかったです。でも人形は難しすぎたような気がします。

6 栽培活動とコミュニケーション

 「栽培活動の教育的効果」(文献1)に挙げられている7つの項目のうち、「計画性」を除く6つの項目については教育的効果を得ていると考えている。普通科高校になった当初は「勤労体験学習」の「体験」という部分が強調されていたが、現在は、勤労体験はもちろんのこと、栽培活動がきっかけとなり、家族や近所の方、さらには地域との交流が進められ、生徒は多くの人と出会い、多くの価値観に触れることで、大変良い刺激になっていると思われる。今、コミュニケーション力の不足が若い世代に言われているが、栽培活動が多くの人とのコミュニケーションの機会になりうることは成果として特にあげておきたい。今回は紙面の都合上、保護者のアンケート結果を省略したが、保護者の中からもコミュニケーションに関する内容は多い。
 普通科高校となって四半世紀、栽培学習を捨てず現在まで取り組んでくることができたのは、全教職員の共通理解の賜物である。実習の指導に苦しい思いをしていた教員も少なくないはずである。私も理科の教員をしていたが、城内高校で栽培を受け持つことになり、技術・知識が不足し、実習はかなりつらいものであった。
 城内高校は再来年度に創立百周年を迎える。農業高校から受け継いだ「百周年の花」がきれいに咲き誇ることを祈っている。
参考文献
1) 向山玉雄(1996)、栽培活動の教育的効果、日本農業教育学会編、学校園の栽培便利帳、農文協、p.9
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