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(5) 連携してここまで高めた小学校の「総合的な学習」と農高の教育力
(6) 生活文化の語り部・農村の高齢者
(7) 教育にとっての家畜の活用
執筆 滝坂信一(独・国立特殊教育総合研究所)

6 動物と触れ合う形態

 学校の教育活動に関連して、子どもたちが動物と触れる機会の工夫は次の3つの場合がある。そして、それぞれによって活動や体験の内容も少しずつ比重が異なることになる。

(1)学校内で動物を飼育する

 この形態は、動物が学校を住みかにするということを意味している。子どもたちは飼育される動物の生命を丸抱えすることになり、「食から排泄」「生から死」にいたるあらゆる場面に立ち会う。併せて飼育することに伴う「不自由さ」を子どもたちは体験することになる。

(2)学校に動物がやってくる

 この形態は動物が「来訪者」になることであり、移動動物園がその典型的な例である。また、先の伊那小学校の例にあるように、学校によっては数か月あるいは数年動物の貸与を受け、ともに過ごす場合がある。前者の場合、動物には訓練がなされ、健康面での管理がなされており、子どもにとっての安全性が確保されて、抱いたり撫でるなど触れるという活動が中心に行なわれる。後者では、動物の一日の姿を見ることができるし、子どもたちは日常の世話を通じて動物の健康に責任を感じながら実際を行なうことになる。

(3)動物と触れ合うために校外に出かける

 動物園、牧場、近隣の畜産農家を訪問するという場合が典型例といえよう。この形態は子どもたちが「来訪者」になることを意味しており、飼育の専門家がいる場で動物のくらしに触れることになる。

7 教育における家畜活用と課題

(1)大型家畜の活用

 全国の小学校3,000校への調査によると、ウサギ56%、ニワトリ39%、サカナ36%、チャボ32%、セキセイインコ21%、アヒル6%となっており、小動物が多く飼育されていることがわかる(財団法人中央教育研究所「生活科の学習環境などに関する調査研究第三次報告」、3,000校送付、1,148校回収、1,993)。その主な理由は、飼いやすさ、すなわち管理のしやすさにある。しかし、子どもたちが身体全体を動員し、また、力を合わせてかかわっていくことを考えたときに、もっと大型家畜の導入が検討されてよい。これら大型家畜のなかには、馬のように子どもたちが自らの心と身体を預けることが可能な動物もいる。また、日常的な触れ合いの体験を通じて私たちの衣や食の生活を考えることになる豚や牛、ヒツジといった家畜もいる。

(2)中学生・高校生への取組み

 社団法人日本理科教育振興協会の調査(1999)によれば、「課題研究や野外観察など多様な学習活動を通して、個性や能力を伸長させること」を目指して中学校に設けられている「選択理科」において、〈飼育・栽培〉を行なっているのはわずか2.7%であり、その内容は「植物栽培、動物飼育(ドジョウの飼育、観察など)」となっていて、哺乳類飼育はほとんど行なわれていない。しかし、自己や他者、社会的価値との葛藤のなかで自己形成をすすめる青年期にある子どもたちが、言葉を媒介とせずに大型家畜を世話し働きかけることを通じてもつ心的な交流の体験の意義は大きい。

(3)生命の尊厳と保護(愛護)

 家畜はもともと使役のために人間に飼われる動物である。使役の内容は、次のように分類できる。
動力:荷役、農作業
労力:盲導、警護、セラピー
肉体の提供:食、毛皮
存在の提供:ペット
 いずれの内容にせよ、彼らは生命存在を人間に提供している。そしていずれの場合でも、彼らは私たち人間にその生命を依存しており、ともに在ることによって私たち人間の側ばかりでなく、動物の側にも私たち人間に対し信頼と愛着を寄せるようになる。そのような存在が不当に虐待にあうようなことが決してあってはならない。

(4)感染症や衛生面の課題

 オウム病やパスツレラ症など飼育動物から人間への感染症に関する社会的意識が高まり、これに伴って教育の場から動物を遠ざける力が他方で働いている。関係者が衛生面の管理方法や感染症に関する知識をもち、適切な管理がなされることは、この領域を広げ充実させていくために欠くことができない。また、このことについて子ども自身が正しい知識と管理方法を知っていくことは、子どもたちが動物と接していくなかの必然なこととして位置づけられる必要がある。

(5)関係者の支援

 文部科学省がインターネット上に設けた「『総合的な学習の時間』応援団」のページには、「動物飼育について」「動物愛護について(動物飼育の指導助言)」などの情報収集に「動物福祉について(資料提供、指導助言)」対応してくれる団体として、(社)日本獣医師会、(社)日本動物福祉協会、(財)日本動物愛護協会、(社)日本動物保護管理協会、(社)日本愛玩動物協会などが挙げられている。しかし、筆者の考えでは、本稿の事例で行なわれているように、まず、学校近隣にある畜産農家や動物飼育に詳しい地域の人々との交流や協力を得るなかでこの活動が始められ、工夫されていくことができたらいいと思う。そしてこれらを支援する組織として、上記の各団体が利用されることである。
 動物行動学者デズモンド・モリスは、現代人の動物との接触について「没個性とストレスに満ち、ますます荒涼としていくコンクリートと鉄の世界に住む多くの人々にとっては、〈動物との接触〉によって得られる愛の関係は、計り知れない価値をもっている。子どもや友人をもたない多くの人々は、象徴的であれ、擬人的であれ、非科学的であれ、ロマンチックであれ、さらに非合理的であれ、心のきずなを、こうした関係から見出しているのかもしれない」と述べている(デズモンド・モリス『マンウオッチング』藤田統訳、小学館、1980)。
 現代社会は、〈機能〉という観点に大きな価値をおいてシステムの開発・整備を進めてきた結果、私たちの心に荒廃をもたらすことになってしまった。学校もその例外ではなかった。それは、「わからない」(言語によって説明することが難しい、あるいは見通しが確定できない)存在(要因)を、社会・学校から排除していった結果である。私たちは今、ようやくその問題の重大さに気づきつつある。そのようななかで飼育される家畜たちは私たちに、実は私たち自身がこの社会の在り方を見直すなかで人間性の復活を実現していかなければならない方向性を示唆し、「飼育される」ということを通じてそれを実現する媒介的な役割を果たしている。
(農業技術大系 畜産編 第1巻より)
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