農業体験学習ネット
その他
体験学習 実践・研究報告のトップへ
(1) 農山村フィールドワーク体験による農業・環境学習
(2) 触覚に注目したブルーベリーの目隠し収穫体験プログラム
(3) 食農教育から生まれる教育的効果に関する
(4) 地場産学校給食を入り口に幼稚園も小学校も積極的に食農教育
(5) 連携してここまで高めた小学校の「総合的な学習」と農高の教育力
(6) 生活文化の語り部・農村の高齢者
(7) 教育にとっての家畜の活用
出典 『農業学習の教育効果に関する総合的研究』
執筆 片岡美喜(愛媛大学大学院連合農学研究科・日本学術振興会持別研究員)
協力 日本農業教育学会

3 地場産農産物を使用した学校給食への評価と社会的影響

 以下では、学校給食における地場産農産物の活用に関する評価と社会的影響について、今治市のアンケート(註3)を元にした計量分析(註4)の結果から検討を行う。

(1)評価について

 まず、学校給食で地場産農産物を使用することに対しての評価を探る解析を行った(表1)。(表1)の表題にある、地場産農産物の使用に対しての肯定的意識とは、「地場産農産物を使用した学校給食には、何らかの価値があると判断し、それらの農産物の平使用に同意する意識」を意味している。解析の元となったアンケートでは、「地場産農産物を使用した給食を食べたい」という項目を地場産農産物の使用に対しての肯定的意識とし、「食べたい理由」である「おいしい」「安心」「見た目がよい」「その他」を肯定的意識の、形成要素として解析を行っている。
 その結果、小学生、中学生共に、地場産農産物に対する肯定意識の形成には「味」と「安心」が寄与している。「新鮮さ(見た目)」については、小学生は無意味となっており、中学生においても低い寄与度である。「その他」に関しては、小学生・中学生とも、寄与は低いものである。
 「その他」の項貝は、自由回答であった。肯定的意識について、小学生の場合は「おいしいから(回答数6)」という意見が最も多く、次に「地元産だから(回答数5)」「(地元産でなくても)どちらでもよい(回答数5)」という答えが挙がっている。中学生は、「(地元産でなくても)どちらでもよい(回答数53)」という答えと、「地元産だから(回答数28)」、「おもしろいから(回答数21)」という答えに大別された。
 小学生の自由回答から、「おいしいから」という回答は、「味」の頃目に重なると言え、直接的な感覚が地場産農産物の評価の基準を占めていることが分かる。中学生の場合、「地元産だから」「おもしろいから」という答えが出現したのは、一連の取組に理解が及び、興味聞心が湧いたためとも言える。
 以上のことから、小学生は「味」という給食から直接受ける印象で肯定的意識を形成し、中学生になれば給食から直接受ける印象に加えて、小学校から続けて「今治型」の学校給食を食べつづけていることで、その間の教育、情報が作用して意識を形成しているものと考えられる。
 しかしながら、自由回答のうち、小学生・中学生とも「(地元産でなくても)どちらでもよい(回答数5)」という回答が多かったことに注目したい。「(地元産でなくても)どちらでもよい(回答数5)」という答えの背景には、「ほかの食材と変わりがないから」、「なんとなくそう感じた」という漠然とした印象から、肯定的意識を形成しているのではないだろうか。中学生の回答、「地元産だから」や「おもしろいから」という地場産農産物を使用する取組への関心が現れる生徒もいる一方、漠然とした印象を持つ生徒が多くいるという結果から、取組に関する情報・教育が十分な浸透に至っていない点が指摘できる。
表1 地場産農産物に関する肯定的意識の形成要素
変数
小学校高学年
係数 t値
中学校
係数 t値
児童・生徒総計
係数 t値
0.1562**
<0.32>
9.81 0.3721**
<0.51>
27.83 0.2990**
<0.45>
28.07
身近で安心 0.1213**
<0.24>
7.29 0.3762**
<0.51>
28.51 0.2922**
<0.44>
27.01
新鮮 0.0241
<0.02>
0.75 0.2137**
<0.14>
6.83 0.0167**
<0.09>
4.85
その他 0.1405**
<0.10>
3.01 0.3950**
<0.29>
14.71 0.3145**
<0.23>
13.31
R2
0.1365 0.3367 0.2702
F値 96.26 774.6 787.68
サンプル数 813 2278 3091
註1) <>内は偏相関係数である。
註2) 「**」、「*」はそれぞれ1%、5%で有意であることを示す。
引用:片岡美喜「修士論文・学校給食における地産池消の展開に関する考察-高知県南国市および愛媛県今治市を事例として-」表14、2003年3月

(2)認知要素について

 次に、地場産農産物の品目による認知要素を探る解析を行った(表2)。ここでは地場産農産物は、どのような特徴を持ったものが、学校給食を通じて存在を認知されているのかという点を探った。今治市で導入している「減農薬米」「今治産小麦パン」「有機農産物」という給食用食材三品目を、同市における学校給食の特徴として捉え、認知度が向上する要素と置いて解析を行った。
 その結果、小学校・中学校ともに減農薬米、今治産小麦パン、有機野菜使用は、地域食材優先使用の認知度向上に寄与している。しかしながら、「今治産小表パン」については、まだ新しい取組であることから、他の項目に比べて低い値を示している。また小学校では、有機野菜より減農薬米の認知が高いこと、中学校では、有機農産物と減農薬米の認知度に差がなくなっていることから、(表1)と同じく、小学生は「味」という給食から直接受ける印象で肯定的意識を形成し、中学生になれば給食から直接受ける印象に加えて、「安心」という意識が付加されてゆくなど、今治市の学校給食を受ける期間の長短が結果に影響を与えているのではないかといえる。
 保護者の結果は、減農薬米と有機野菜への認知度が高く、小麦の認知度は無意味となっている。このことから、一つは今治地域で長年行われている有機産業などの取組が、保護者らに認識されていること、もう一つは子供から保護者に与える影響によって農産物の認知度が左右されるものと言える。
表2 学校給食における地場産農産物の認知要因
変数
小学校高学年
係数 t値
中学校
係数 t値
小学校・保護者
係数 t値
中学校・保護者
係数 t値
減農薬米使用への認知 0.4365**
<0.41>
13.13 0.3087**
<0.28>
14.28 0.2261**
<0.18>
5.63 0.1959**
<0.15>
7.39
今治産小麦パンへの認知 0.1687**
<0.16>
4.72 0.1982**
<0.18>
9.17 0.071
<0.05>
1.83 0.0516
<0.03>
1.74
有機野菜使用への認知 0.1978**
<0.19>
5.52 0.3109**
<0.28>
14.14 0.1947**
<0.19>
5.91 0.2109**
<0.19>
9.54
R2
0.3702 0.4950 0.1031 0.0847
F値 172.41 187.23 31.74 54.66
サンプル数 813 2278 942 2202
註1) <>内は偏相関係数である。
註2) 「**」、「*」はそれぞれ1%、5%で有意であることを示す。
引用:片岡美喜「修士論文・学校給食における地産池消の展開に関する考察-高知県南国市および愛媛県今治市を事例として-」表15、2003年3月

(3)浸透要因について

 学校給食における地場産農産物の使用による社会的影響を探るために、給食使用食材の家庭への浸透要因の解析を行った(表3)。
 この解析を行う元となるアンケートでは、保護者に対して、給食で使用されている地場産農産物を家庭で使用したいかと質問している。「家庭で実際に使用している」という回答を、地場産農産物の家庭への浸透状況を表す項目とし、使用している理由である「新鮮」「安心」「美味」「安価」の四項目を浸透要因の項目として解析している。
 解析結果によると、「新鮮」と「安心」は寄与しており、中でも新鮮の寄与度が高い。これは、地場産という流通距離の短さを物語る情報から、「新鮮」という意識が特に高い影響を受けているものと考えられる、「安心」に対する認識は、食材の安全性認識と密接に関わっていると思われ、給食食材の家庭への浸透は、給食における有機農産物の使用に負うところが大きいと思われる。「美味」および「安価」は統計的に無意味となっており、地域産だから美味しいとの認識が家庭への普及にほとんど寄与していないことも示している。また「安価」についても無意味を示していることから、地場産農産物の家庭への普及要因は、価格の面で支持されているのではなく、品質の面で支持されているということが言えるだろう。
表3 給食用食材の家庭への浸透要因
変数
小学校・保護者
係数 t値
中学校・保護者
係数 t値
保護者総計
係数 t値
新鮮 0.6897**
<0.73>
32.77 0.7128**
<0.69>
45.35 0.7053**
<0.70>
55.67
安心 0.3432**
<0.45>
15.42 0.3022**
<0.34>
17.46 0.3154**
<0.38>
22.87
美味 0.0616*
<0.07>
2.31 0.0085
<0.01>
0.39 0.0027
<0.02>
1.58
安価 0.0784**
<0.09>
2.71 0.0897**
<0.09>
4.26 0.0914**
<0.09>
5.01
R2
0.8023 0.7482 0.7637
F値 1074.38 2536.7 3098.98
サンプル数 942 2202 3144
註1) <>内は偏相関係数である。
註2) 「**」、「*」はそれぞれ1%、5%で有意であることを示す。
引用:片岡美喜「修士論文・学校給食における地産池消の展開に関する考察-高知県南国市および愛媛県今治市を事例として-」表16、2003年3月
戻る 進む
 
農業体験学習ネット
このコンテンツのすべての画像、文字データについて無断転用・無断掲載をお断りいたします