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(1) 農山村フィールドワーク体験による農業・環境学習
(2) 触覚に注目したブルーベリーの目隠し収穫体験プログラム
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(5) 連携してここまで高めた小学校の「総合的な学習」と農高の教育力
(6) 生活文化の語り部・農村の高齢者
(7) 教育にとっての家畜の活用
出典 『農業学習の教育効果に関する総合的研究』
執筆 山岸 主門(島根大学生物資源科学部)
小浦 誠吾(南九州大学園芸学部)
協力 日本農業教育学会

4 目隠し収穫体験プログラムの実際

 以上の基礎試験の結果を基にして、実際に小学生や大学生を対象に、目隠し収穫体験プログラムを2000年から2002年にかけて数回実施した(文献4)。どちらも島根大学附属生物資源教育研究センター本庄総合農場内のブルーベリー樹を用い、収穫最盛期に行った。目隠しは市販のアイマスクや薄手のタオルを用いた。実際の収穫体験プログラムの手順を、「課題」および「気づいてもらいたいこと」の2項目に分けて第5表に示した。
第5表 ブルーベリー目隠し収穫体験のプログラムの手順
  課題 気付いてもらいたいこと
1)説明 「ブルーベリー果実を生で食べたことがありますか」 皮や種子も含めて、丸ごと食べることが可能なこと
2)収穫1 「おいしいと思う果実を食べながら探してください」 未熟果と成熟果が混在していること
小果柄がついたまま取れる果実もあること
3)質問1 「食べずにおいしい果実を探せますか」 成熟程度は一般的に果皮色で判別していること
4)収穫2 「果皮色以外の点でおいしい果実を探してください」 成熟段階によって、大きさや硬さ等が異なること
5)質問2 「目を閉じておいしい果実を探せますか」 目をつぶっても収穫できそうだということ
6)収穫3 「目隠しをして、おいしい果実を選んで収穫してみましょう。また、小果柄を付けないように気をつけましょう」 視覚を擬似的に遮ることで、他の五感がいきいきしてくること
7)整理 「実際にどうやっておいしい果実を選びましたか」 目隠し収穫体験の意義を、とくに五感に注目して考えること
 まず、樹の前でブルーベリーの概要を簡単に説明した(説明)。そして、「おいしいと思う果実」を予備知識なしに、「味覚」のみで判断してもらった(収穫1)。
 ある程度、試食しながらの収穫を終えたところで、「次に、食べずにおいしい果実を探せますか」と問いかけ、通常は果皮色によって成熟程度を判断していることを意識してもらった(質問1)。次に、「果皮色以外の基準でおいしい果実を探してください」と課題を出し、果実に直接触ったり、臭いをかいだりしながら摘み取ってもらい、「触覚」や「嗅覚」に注目してもらった(収穫2)。おおよそ、「味覚」や「視覚」以外の熟度評価のものさしに気づきかけたところで、「目をつぶっておいしい果実を探せますか」と問いかけ、あらためて「触覚」による成熟程度の判別方法を各自で整理してもらった(質問2)。
 ここまでの導入を経た段階で、2名ずつのペアをつくり、目隠し収穫者とその補助者の役割を交互に体験させた。1人約5分間目隠し収穫を行ったが、その際に補助者は、果実のあるおおまかな場所を声で適宜伝え、また、摘み取られた果実を収穫者から受け取って袋に入れた(収穫3)。このように言葉で果実のある場所や成熟程度についてコミュニケーションをとるプロセスを取り入れることにより、遊び感覚で協力し合うことを体験できるとともに、触覚に加えて「聴覚」の存在の重要性も認識するきっかけになることも考えられた。それぞれ収穫した後に、どのように成熟果と未熟果を区別したのかをお互いに批評しあい、各自が摘み取った果実について成熟果割合などを計算してもらった。その結果や成熟程度を判別した方法、全体の感想についてアンケートに書いて提出してもらった(整理)。
 このような体験プログラムを実施した結果、目隠し収穫時の能率は1分間当たり約5果、適熟果率は8〜9割程度、小果柄付着率は6%前後であった。つまり、目隠し状態であっても適度な能率と比較的高い精度で果実を摘み取ることが可能であり、また不要物である小果柄の付着した果実の割合も低く抑えられた。
 体験後の学生の全般的な感想の多くは、「はじめは戸惑ったが、慣れてくると、予想した以上に目隠し状態でも摘み取ることができて驚いた」というものであった。「触ることは見るだけでは得られない、事物の本質ともいえる情報を提供する」という指摘があるが(文献1)、目隠し収穫により、「五感の相互補完・互助」を実体験し、これにより、体験者はさまざまな新しい発見を得られたものと思われた。

5 成果と今後の課題

 以上のことから、擬似的に視覚からの情報を遮った状態で収穫する体験プログラムを行った結果、適度な能率と比較的高い精度で適熟果を摘み取ることが可能であること、また、体験者に過度の精神的負荷を与えることなく安全に実施できること、そして、体験者の年齢に関係なく実施可能なプログラムであることを確認した。
 これらの体験を踏まえて現在は、指先や手のひらの感覚や指の動きを鈍化させることにより、触覚のすばらしさを体験者に、より深く、明確に体感してもらう目的で、触覚を制限した状態(手袋装着)での収穫体験や、成熟程度を果皮色で判別することは困難であるが、枝葉と果房の区別がある程度可能な状態(暗眼鏡装着)、つまり果房を探し出す動作が比較的取りやすい状態での収穫体験を試験的に行っている(文献6)。手袋収穫と暗眼鏡収穫を本体験プログラムに適切に加え、ステップを踏むことは、体験者の目隠し収穫体験のもつ意味のより深い理解に有効であると考えている。
 また、目隠し収穫時に人間が受ける生理・心理反応について、今までのところは簡単な心拍数計測や聞き取り調査を行ってきたが、現在、心電図R-R間隔データから心拍変動を解析し、自律神経系の交感神経と副交感神経との詳細な関係を明らかにする調査を実施中である。これにより、たとえば目隠し収穫は創造性や活気、表現力などにプラスの効果をもたらす、といった客観的なデータが得られることを期待している。
 農のもつ教育力を示すひとつの事例として、五感、特に触角に焦点を当てた目隠し収穫体験を紹介した。最近、自然の香りや手触り、体の揺れなど、日常生活では感じることの少ない刺激をデザインした五感を刺激する広場や庭、散歩道などが諸外国では作られ始めている(文献3)。自然素材を生かしやすい農業教育の現場でも、楽しみながら人の感性に働きかける仕組みを積極的に取り入れることは大きな意義があると考える。
参考文献
1) 三宮麻由子(1999)「五感を揺さぶる公園」の可能性をめぐって、都市緑化技術、32:26-29
2) 進藤一馬(1992)五感の構造、精興社、東京、pp.8-33
3) 田中直人・保志場国夫(2002)五感を刺激する環境デザイン、彰国社、東京、pp.56-71
4) 山岸主門ら(2002)触角に焦点を当てたブルーベリー目隠し収穫体験の試み、日農教誌、33 (1) : 11-18
5) 山岸主門ら(2002)触角と視覚を制限したブルーベリー収穫体験時の能率、精度、および精神的負荷、日農教誌、33 (1) : 25-33
6) 山岸主門ら(2002)ブルーベリーの目隠し収穫体験プログラムへの暗眼鏡を装着した収穫法の導入、日農教誌、33 (別1) : 21-24
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