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(1) 農山村フィールドワーク体験による農業・環境学習
(2) 触覚に注目したブルーベリーの目隠し収穫体験プログラム
(3) 食農教育から生まれる教育的効果に関する
(4) 地場産学校給食を入り口に幼稚園も小学校も積極的に食農教育
(5) 連携してここまで高めた小学校の「総合的な学習」と農高の教育力
(6) 生活文化の語り部・農村の高齢者
(7) 教育にとっての家畜の活用
出典 『農業学習の教育効果に関する総合的研究』
執筆 小松崎 将一(茨城大学農学部附属農場)
協力 日本農業教育学会

4 農山村フィールドワーク体験の感想

(1)社会人の感想

 10年間におよぶ農山村フィールドワーク体験の実践を通じて、その感想をまとめると次のとおりである。農村体験に参加した社会人の感想に注目すると、農作業中にさまざまな生物の存在に驚きと感動を示している。また、山菜など自然の恵みを人間が直接利用できることに感動している。そこでは、農作業労働に対する大変さを知ると同時に、それらの労働がわれわれの日常の食に直接結びついていることを再認識していることが伺える。また、のんびりできたとか気分転換ができたという、いわゆる都市生活からの解放も指摘されている。

(2)学生の感想

 次に学生の感想を見ると、購入品あふれる身の周りの生活に対して、農村で「自分でつくりあげる」生活に驚いている。ここでも農業労働の大変さと「食」へのつながりに思いを寄せている。さらに、有機農業などその生産システムそのものに高い関心を寄せている。社会人の感想ではみられなかったが、農家での規則正しい生活や、人間関係の親密さに感動している。さらに、これらの地域環境と共生を目指す農業のあり方に魅力を感じている。

(3)受入れ農家の感想

 これに対し受入れ農家の感想を見ると、農村体験を受け入れることにはさまざまな戸惑いなどもあるが、多くの人たちに注目されること、いっしょに作業をすることで自らの経営に喜びを見出している点が注目された。また、都市住民などの意見を聞くことで、農業経営について見直す契機になることも伺えた。

5 農山村フィールドワーク体験の意義

(1)農村景観、食、連帯感の再認識

 まず、体験によって農村景観のすばらしさを再認識することが認められた。「のどかで自然のいっぱいあるところ」と、農村の魅力を感じる意見が多く認められる。また、水田畦畔の法面での草刈り体験によって、農村の自然は決してありのままの自然ではなく、そこで生活する人々の労働によって管理された生態系であることを理解する発言がみられた。
 次に、山林で採取した野草や菜園で収穫した野菜を調理し、食べたことに強い関心がみられる。「生活のもとになっているものを改めて知った」など、農業と食および生活とを結び付けて考える意見がみられている。とくに「孤食」化が進む食生活の変化の中で、農村で自分たちが収穫し、調理したものをみんなで食べるという体験を通じて、「みんなと同じ作業をして、いっしょにご飯を食べるだけでいろんな人と仲良くなれた」「人の温かさとか協力しあうとか、近頃自分たちに欠けていたことの大切さを知った」などの感想もある。これらは、農山村フィールドワーク体験によって参加者同士、あるいは農家との連帯感が深まったことを表している。

(2)冷害克服と農業技術に対する認識の深まり

 さらに、地域の自然環境と農業生産技術との関連に注目する感想もみられている。当該地域は冷害被害の大きい地域であるが、そこで行われている水稲栽培は冷害克服に対してさまざまな対応を行っている(文献2)。とくに、成苗・深水管理、疎植栽培、および追肥技術など、常にイネの生育をチェックして管理を施す農家の姿勢には、「作業の一つ一つに関して非常にきめ細かい」など地域・自然と適応した農業生産技術に対する理解を深めた感想もある。
 特に、受入れ農家が実践している稲作は、冷害に対して現状では高水準の技術で対処しているものである。冷害などの問題、つまり自然と人間とが接触する最前線はいつの時代でも食べることに関わっており、常に自然と対峙した技術が基本にあることを体験者が強く認識したと考えられる。自然と対峙すると同時に調和を図る農業は、人間のもつ全能力の発動を求めてやまぬものがあり、マニュアル化された技術ではなく、たゆまぬ研鑽の結果得られた技術を駆使し、生の充実感が満ち溢れている世界であることを、農山村フィールドワーク体験によって参加者が身をもって理解することを期待したい。

(3)社会人と大学生の感想の違い

 このフィールドワーク体験の実践は、社会人と大学生(農学部)を対象として実施してきたが、両者で異なる感想も認められた。すなわち、「気分転換ができた」「ゆっくりできた」「体を動かすのは楽しい」など、日常の都会生活での繁忙からの解放感が社会人からの感想に多く認められている。また、農村の自然・生物に対する関心も社会人に多く認められる。このことは、高度に専門化した社会人の生活のなかで、精神的な自然への回帰が認められ、農村滞在そのものにいわゆる「癒し」効果があることを示している。
 これに対して学生の場合は、「農村での規則正しい生活」「家族関係・友人関係の親密さ」など、農村生活そのものが醸し出す人間性の部分に深く興味を抱いている。
 このように、参加者の社会的背景によって感想は異なるが、これらの感想は、農村を単に訪れるのみでなく、フィールドワークを身をもって体験したことから得られたものと考えられる。
 農村において、短期間ではあるがフィールドワーク体験を行うことは、自然・農業・生活・地域資源などのさまざまな関連についてのモチベーションを高め、今までの生活では得られなかった、あるいは見逃していた自然、生活および人との関係について有機的に考えていく契機を与えている(文献3)。このことは、昨今のグリーンツーリズムブームの中で、その体験者が農村での農作業、食、生活を地域農家と共同体験および交流するうえで、より重要であると考える。

6 グリーンツーリズムに求められるもの

 農業・農村理解を深める農山村フィールドワークについて、10年間の実践に基づきその意義について検討した。その結果、農村体験によって農村地域の魅力を感じ、われわれの生活の根幹を担っているのが農村であることを再認識していることが伺えた。また、受入れ農家にとっても、都市住民との交流によって消費者を意識した農業経営を再考する契機を与えている。
 一見、「食」と「農業」の関係がきわめて希薄な現代生活において、農山村フィールドワーク体験は、農業・農村のもつ価値を見直し、かつ自らの生活の一部にそれらを取り込む活動でもある。農村・農業はわが国の多様な自然や生物相を保全している役割を担っていること、農業そのものがより環境保全的な手法を用いることへの理解と支援、これらを十分に配慮した農村体験が、これからのグリーンツーリズムで求められるのではないだろうか。
参考文献
1) 小松崎将一(1994)、都市住民における農山村地域資源の教育的活用に関する研究 第1報 稲作栽培をとおした交流の意義とその実践について、日本農業教育学会誌 25(1):51-56
2) 小松崎将一(1996)、都市住民における農山村地域資源の教育的活用に関する研究 第2報 冷害にみる農業生産の困難性への理解、日本農業教育学会誌 27(1):1-7
3) 小松崎将一(1998)、大学における教養教育としての農山村フィールドワーク体験、日本農業教育学会誌 29(2):61-66
4) 向山玉雄(2000)、「農業の教育力」について考えるために、日本農業教育学会講演会資料、1-8
5) 農林水産省農村振興局(1999)、グリーンツーリズムの展開方向、農林水産省農村振興局資料、1-15
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