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(1) 栽培方法を科学的に考えさせる栽培マル秘作戦の実践
(2) 栽培体験の教育的効果に関する
(3) 地域の教育力を取り入れた栽培学習
出典 『農業学習の教育効果に関する総合的研究』
執筆 林 瑞紀(福井大学教育学部生 現 福井県敦賀市立松原小学校)
溝端良庸(福井大学教育学部生 現 大阪府松原市立松原中学校)
木下孝治(福井県宮崎村立宮崎中学校 現 福井県宮崎村教育委員会)
奥野信一(福井大学教育地域科学部)
協力 日本農業教育学会

3.宮崎中学校における栽培学習とその関連事業

 宮崎村は福井市の南に位置し、自然環境に恵まれた地域であり、古くから窯業が盛んで「古越前」として日本六古窯の一つに数えられている地域でもあり、現在も焼き物の生産が盛んに行われている。
 宮崎中学校は、昭和22年の現行学制により村内唯一の中学校として村の中心部に新設された。その後、昭和54年新設の現校舎に移転し、学校食堂(ランチルーム)や窯(宮崎陶芸)などが設けられ、これらの施設を利用した一斉給食やクラブ活動での陶器作りなど、伸び伸びとした個性重視・体験重視の教育を推進している。宮崎中学校の3年生43名(平成13年度)は同村内の宮崎小学校在学時に学校で栽培活動を経験している(宮崎村は、一村一小中学校)。ただし、地域的に田畑や山林を所有している家庭が多いにも関わらず、家庭での栽培経験を有する生後は10名(23.3%)とそれ程多くない状況である。

 本中学校技術科では、生徒の栽培経験の充実や栽培への関心を高め、日々の生活にも生かすことのできる実践力の育成をめざし、地域の専門家を外部講師として招き、担当教師とのティームティーチング形式による栽培学習に取り組んでいる。前期(夏野菜:ジャガイモ、サツマイモ、キュウリ、トマト、ナス、メロン、スイカ)と後期(秋野菜:ナス、ダイコン、ハクサイ、赤カブ、白カブ)に分け、各クラス共に表1の指導計画で授業を行っている。都市部の学校と比べると大面積の学校農園(5アール)ではあるが、二クラス共に通年授業を試みると生徒ひとりひとりの活動が十分でなくなるため、前後期制で行っている。また、作物は生徒の希望により決定するため、年度によって作物に違いが出てくる。また、表2は前期クラスの学習の流れである。表3は外部講師(地元農家の河合清氏、以下講師)による授業の一場面である。
講師の生徒との関わり方や説明の言葉遣いを聞いていると、専門的な内容をそのまま生徒に伝えているにも拘らず、生徒にとって難しすぎることはない、講師の経験に基づいた身振り手振りを使った面白い説明で、学習内容を生徒に十分理解させている。担当教師は授業時間や作業の進度等に気を配り、生徒に声をかけながら共に作業を行っている。講師と担当教師がお互いに補完し合いながら指導している。  
表1 指導計画(全30時間)
  栽培と私たちの生活 ・・・ 1時間  
栽培の基礎 ・・・ 3時間
栽培計画 ・・・ 2時間
野菜の露地栽培 ・・・ 22時間
栽培技術の課題 ・・・ 2時間
表2 前期クラスの学習の流れ
  教師(木下先生) 生徒(前期クラス) 外部講師(河合さん)
4月 ・栽培とわたしたちの生活
・栽培の基礎
・栽培計画、肥料の調達
・野菜の露地栽培
日常管理、種イモの調達

栽培学習の資料集め
栽培作物の決定
ジャガイモの植え付け
日常管理


畑土づくり
鍬の使い方、畝の作り方
植え方の指導
5月

苗の調達、肥料の調達


日常管理(除草、摘芽)


日常管理(除草、摘芽)
キュウリ・トマト・メロン
ナス・スイカの植え付け

ナス・トマトの支柱立て
トマトの摘心
日常管理
スイカ・メロンのキャップがけ
キュウリ・ナス・トマトの手入れ
日常管理
畝作り、マルチがけ
植え方、元肥の指導

支柱の準備
摘芽、摘心、支柱立ての指導


キャップの準備
キャップがけの指導
6月
苗の調達、肥料の調達

日常管理(除草、追肥、摘芽)

殺菌剤、殺虫剤の用意
サツマイモの植え付け
日常管理
スイカの日常管理
日常管理
殺菌剤、殺虫剤の散布
日常管理

畝作り、マルチ、植え方の指導

たな広げ、印付けの指導

散布方法の指導
7月


夏休み中の日常管理計画
ジャガイモを鍬で収穫
日常管理
キュウリ・トマト・ナスの収穫


鍬を使った掘り方の指導


8月
メロン・スイカ・キュウリ
トマト・ナスの収穫

日常管理
メロン・スイカの収穫

キュウリ・トマト・ナスの
収穫と日常管理(当番制)


収穫時期を指導



9月
洗浄、袋詰め、
販売方法、金額の検討

トマト・ナスの販売




商品価値を高める工夫
販売場所の確保

10月
日常管理
(除草、スイカ・トマト・
キュウリの後片付け)
サツマイモを鍬で収穫
日常管理と後片付け



鍬を使った掘り方の指導


 当初は生徒の学習意欲向上を目的として招聘した外部講師であるが、所期の目的のみならず、作物の収量増加と共に、生徒が栽培学習の視点から自分達の地域や生活を再認識する契機となった。すなわち、地域イベントや地元スーパーにおいて自分達で育て収穫した作物を販売するに当たり、作物の洗浄、袋詰めから販売方法、金額の検討まで決定する必要に迫られた。その活動の中で、今までは消費者としての立場だけであった自分から、生産者の立場や経済の仕組みにまで想いを巡らすことができるようになった。作物を商品として扱う認識が生まれ、お客さんに売る苦労や買ってもらう喜びを身を持って体験した。家族が農業に従事している生徒などは、自らが体験したことで興味・関心が湧き、祖父母の苦労も実感したことから、家庭での手伝いを積極的にする生徒も増えた。図3はその地域イベントにおける生徒の出店の様子である。
図3 地域イベントにおける生徒による出店の様子
 以上の栽培学習を通じて、図4のような地域の教育力とそれによって期待される効果が見えてきた。図3の矢印の方向は一方から他方への働きかけ、連携を意味している。矢印が双方向、かつその数が増加することは取りも直さず地域コミュニティ形成が進むことを意味している。栽培学習を核にする取り組みと通して、単独では機能しないあるいは能力が限られる地域の教育力が有機的連携を取るようになり、そのことがより高次の活動に止揚したり他の教育活動に伝播したりする推進力の一つになることが期待される。
 このような教育活動を継続的なものにしていくためには、前述したような学社融合コーディネーターの存在が重要である。点と点を線にし、さらに面にするコーディネーターが必要不可欠になってくる。このようなコーディネーターは広い視野から物事を見ることができ、計画立案と実行力を備えた人が適任と思われ、行政の中でも特に教育委員会にそのような人材育成の期待をしたい。
図4 栽培学習を通して見えた地域の教育力(◎)と期待される効果(☆)

5 まとめ

 栽培体験には、教育現場でさまざまな効果が期待されている。学習指導要領などでは、情操的側面や技術的側面といった広い範囲での効果が期待される。本研究では、栽培体験が中学生にもたらす影響について選択技術を受講する中学生を対象に調査、考察を進めた。
 その結果、栽培体験は植物に対する関心や反応の面で大きな影響を与えることが明らかになった。生徒は栽培体験により、既成概念にとらわれず、外界からの刺激に敏感に反応することできる「感受性」の増進を通じて、生命の大切さやものに対するいたわり、愛着、生命に対する責任感などを育てたようである。なお、栽培の状況や環境によって、その比重は変化すると考えられ、栽培体験に取り組む個々の生徒に応じた効果を期待することができる。
 今後、多くの教育現場で、栽培体験の教育的効果を期待した取り組みが行われていくであろう。本研究では、「感受性」などの情操的側面への効果が確認されたが、栽培体験のもつ多様さは、さまざまな教育的効果をもたらすと同時に、計画された教育活動の目標と反する結果を引き起こすおそれもある。栽培体験を通じての教育活動の実施には、目標に応じた指導方法と、十分な指導体制の確立が肝要であり、そのための研究を今後推し進めたい。
参考・引用文献
(註1) 文部省:中学校学習指導要項、大蔵省印刷局、1998、12
(註2) 生涯学習審議会答申:地域における生涯学習機会の充実方策に'ついて、1996
(註3) 伊藤俊夫編:学校と地域の教育力を結ぶ―子どもたちに豊かな体験を―、全日本社会教育連合会、2001、9
(註4) 山本恒夫・浅井経子・坂井知志:「総合的な学習の時間」のための学社連携・融合ハンドブック、文憲堂、2001
(註5) 森山潤・町田豊文:技術科教育における地域教育力の活用と総合学習、技術教室、農産漁村文化協会、2000、9
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