農業体験学習ネット
小学生
体験学習 実践・研究報告のトップへ
(1) 小学校での栽培学習の実践とその教育内容
(2) 学外の稲作体験による児童の自然に対する感情・認識の変化
(3) 小学校の発達段階に応じた農業体験学習の効果
出典 『農業学習の教育効果に関する総合的研究』
執筆 佐々木 壽(宮城県農業高等学校)
協力 日本農業教育学会

4 小学生の感想と評価

 農業高校生の指導支援による継続的な農業体験学習に参加した小学生の感想や、自己評価等の結果をまとめると次のようである。
<小学校児童による農業体験学習の感想と評価の事例:名取市立閑上小学校>
<「ハマボウフウを学習して」の児童の評価と感想:名取市立下増田小学校>
 小学技においては,各種の農業体験学習について、「活動が楽しかった」が97〜100%にも及び、「楽しく感じた」理由として、学習の内容にもよるが全体として「高段生が優しく教えてくれた」が約90%近くにもなった。「ものづくりが楽しい」「園芸の体験が楽しい」なども上位にあがっている。高校生による指導支援と学習の内容が、児童に大きなインパクトを与えていることがうかがわれる。
 さらに、「これからも農業体験学習をしてみたい」と思っている児童が93〜100%と圧倒的に多いことが認められた。小学校の教職員からは、こうした実績から、これからも引き続いて本校との連携学習を切望しているという意見が多く聞かれた。

5 研究の評価

以上のことを踏まえ、研究の成果をまとめると次のようになる。

(1)小学校児童・農業高校の生徒の評価

児童生徒を指導支援した高校生は自信と満足、成就感を得て、自分たちの農業学習の意義と役割を再認識した様子である。いわば「なすことによって学ぶ」という農業教育の基本を、小学生に指導援助することで培うことができたものと考える。
高校生との交流によって児童は高校生に親しみがわき、興味を持って取り組み、教えられたことが強い印象になって心に残る学習活動ができた。
体験学習の過程で、地域の伝統文化や農村資源などを観る眼が広がったように思われる。
高校生の農業に関するスキルが高まり、暮らしや環境、福祉問題へと課題意識が向上した。
栽培や利用学習の結果、農産物や加工食品、手作り作品を児童生徒に手ほどきする過程で、農業高校生個々の感性や特技を発揮することができた。また、互いに協力する態度も培うことができた。
農業高校生は自分の住む地域を再発見し、物の見方や視点を培うことができた。
高校では連携学習の内容を含めた「課題研究」学習で、学校農業クラブ各種発表において宮城県大会最優秀、東北大会連続出場等などの成果を記録することができた。
高校生は児童生徒や保護者、及び小学校の教職員から感謝されて成就感や満足感を得るとともに、専門に学習している内容について一層理解を深めることができたようである。
高校生と児童との交流とふれあいの結果、両者ともに感動する心が芽生えたり、心を揺さぶられるような体験のなかで心豊かになり、やさしくなれたようである。
高校生は小学生に数えることの難しさを痛感した様子であり、自らの学習態度などについても振り返ることができた様子である。

(2)小学校教員・農業高校教員の評価

農業体験学習全体を通して、小学校・農業高校間での相互訪問により、教職員間の親睦と交流を深めることができた。特に高校側にとっては、小学校の授業形態や教育課程、児童生徒の躍動感あふれる姿や、教職員の児童生徒への教育的愛情を直接、垣間見ることにより、高校における教育のあるべき姿について再考する機会を得たことは幸いであった。
小学校側では、専門的な分野の教育だけに、小学校だけで行われる教育活動では考えられなかったほど、幅広い活動を行うことができたという意見圧倒的に多かった。
農業高校の学校農場が交流体験やふれあいの場となり、地域に開かれた教育が実践できた。
高校生が実践しているプロジェクト学習の一端や、在来植物保護、地域の食文化などについても、交流体験活動に活用することができた。
小学校の教職員への農業教育に関する理解を深めるのに役立つことができている。小学校側でも今後も、学校間の連携として推進していきたいと考えている。
農業高校の教育にふれることができ、小学校教員として、もっと将来を見通しながら指導にあたろうという考えがでてきた。さらに、小学校だけでは実現できない活動にふれさせることができ、児童に活動の広がりをもたせることができた。
農業体験学習の授業のために、農業高校生がすべて準備・工夫したくれたことに対して、小学校の教職員の立場として、心から感謝の思いを持つことができた。
小学校では、地元の農業高校の特色や良さがわかって教職員の興味・関心が高まり、次年度の進路選択指導に巾が出てきた。
小学校側では高校生が生き生きと学ぶ姿を日の当たりにし、農業高校の良さを感じるとともに高校生活の厳しさも肌で感じ、進路、さらに自己の生き方について真剣に意識する機会となることができた。
 総じて、小学校の児童を対象とした農業体験学習では、農業高校のもつ特性を最大限に活かすことができた。すなわち、農業高校生が主体となって小学生を指導支援した活動において、小学校の児童たちは、農業体験学習を通して農業や食料に目を向け、いのちの大切さを学び、自然環境への関心も高まってきた。また、高校生とのふれあいにより、高校生に強く親しみを感じたようである。
 一方、農業高校の生徒たちは児童たちと交流して、専門に学習している教材の一端を指導支援したが、その学習支援の過程で、生徒自身は社会性や人間性を高め、学習体験を通して自己を見つめ直しながら、専門教科学習を深化させることができたと考えている。
 このように、小学校の農業体験学習では、「総合的な学習の時間」への農業教材の活用のもとで「生きる力」を身につける学習になり、学習の展開過程では、食農教育や環境教育、緑化教育や自然体験学習、さらには地域文化発見の学習や、ふるさと教育としても期待できることがわかった。
 また,農業高校においては、農業教材の小学校への提供と実践により、農業教育の一層の理解に役立ち、特色ある学校づくりの一環として学校の活性化に結びつくものであると確信している。
戻る 進む
 
農業体験学習ネット
このコンテンツのすべての画像、文字データについて無断転用・無断掲載をお断りいたします