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(1) 小学校での栽培学習の実践とその教育内容
(2) 学外の稲作体験による児童の自然に対する感情・認識の変化
(3) 小学校の発達段階に応じた農業体験学習の効果
出典 『農業学習の教育効果に関する総合的研究』
執筆 小林菜々恵(株式会社星野リゾートピッキオ)
三島 孔明(千葉大学園芸学部)
藤井英二郎(千葉大学園芸学部)
協力 日本農業教育学会

(2)栽培体験後の質問への回答に見られる変化

 各回の体験後の質問紙で、イネ、土、ムシ、草花に対して体験中に感じたことを書いてもらい、その内容によって7つのカテゴリー(表3)に分類した。
 これらの出現回数と推移を見ると(表4)、「気づく」「嫌悪」は1、2回目に多く見られ、「知る」「観察」は2〜4回目に多く、「愛護」「広がり」が3回目以降に見られた。イネとムシも(表5、7)、はじめに「気づく」がみられ、半ばから後半に「愛護」「広がり」がみられ、全体的な傾向と似たような傾向が見られた。
 また土では(表6)、「嫌悪」が1回目のみで、ムシでは(表7)2回目のみで見られ、どちらもその後は見られなくなっている。草花については(表8)、回答数は少ないものの、6回目に「親しむ」「愛護」「広がり」がみられている。
 以上のことから、イネやムシなどに対して、初めの“気づく”“親しむ”といった状態から、イネが成長・変化したり、ムシが盛んに出現するころには“知る”“観察する”といった状態に移り、さらに“愛護的な気持ちをもつ”“関連することに関心が広がる”といった状態へと移り変わっていくものと考えられる。
 また、初めは嫌悪感を抱くことのあった土やムシに対しては、「最初はいやだったけどやってみると気持ちよかった」「はじめはゲーとおもっていたけど入ってみたら気持ちよかった」「カマキリが怖くなくなった」「虫がたくさんさわれるようになった」といった記述にみられるように、印象が好転する様子も伺われた。
 また、稲作体験の直接の対象ではない草花に対しても、「わからない花があってもほおっておかないで調べるようになった」「他の近くの花の様子が春と比べると変わった」「雑草の生命力が強いと思った」といった記述が見られ、稲作体験を通じて周囲の植物に関心を示すようになった様子が伺えた。
表3 回答のカテゴリーと例
カテゴリー 回答の例
気づく 「虫がいた。」「田んぼの中は冷たかった。」「きゃー。」
嫌悪 「べたべたして気持ち悪い。」「虫が気持ち悪い。」
親しむ 「稲は元気にしてるかな。」「虫がかわいい。恐くなった。」
知る 虫・植物の名前を回答、「稲が大きくなっている。」
観察 「田の近くの様子が春と比べると変わった。」「5cmくらいのタニシが
愛護 「稲を守りたい。」「虫がかわいそう。」
広がり 「僕も草も同じ生き物。生きている。」「農家の人の大変さがわかった。」
表4 イネ、土、ムシ、草花に対する回答全てのカテゴリー別の推移
 
表5 イネに対する回答のカテゴリー別の推移
  1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目
気づく 33 14 3   4  
嫌悪 6 6        
親しむ 8 1   3   13
知る 1 23 16 6 1 4
観察   11 6 9 4  
愛護     5 2 5 1
広がり     2 3 1 6
 
  1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目
気づく 5       4  
嫌悪            
親しむ 1          
知る   9 12      
観察   2 4 7 3  
愛護     5 1    
広がり       2 1  
表6 土に対する回答のカテゴリー別の推移
 
表7 ムシ(昆虫や小動物)対する回答のカテゴリー別の推移
  1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目
気づく 27 2        
嫌悪 6          
親しむ 7         3
知る   2        
観察            
愛護            
広がり           1
 
  1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目
気づく 1 6 3      
嫌悪   6        
親しむ   1   3   4
知る 1 1 1 6 1  
観察   7 2 2 1  
愛護       1 5  
広がり           2
表8 草花(イネ以外の植物)に対する回答のカテゴリー別の推移
   
  1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目
気づく   6        
嫌悪            
親しむ           6
知る   11 3     4
観察   3        
愛護           1
広がり     2 1   3
   

(3)絵の中に描かれた自然物の種類数の変化

 体験教室の初回と最終回に、「自然」という言葉から思い浮かぶ絵を子どもたちに描いてもらい、その絵に描かれている自然物(たとえば「木」「山」など)の種類の数を、個人ごとに比較した(図3)。
 その結果、有効回答者7人のうち5人で体験後の構成要素が増加していた。増加の様子は、Aの児童は体験後の構成要素が5倍、Eは約3倍、Gは2倍になっていた。また、体験前には見られなかった「木々がいっぱいある所、木が太くて土がいい土」「人間はいない世界」といったコメントも体験後に見られた。
 子どもの絵は子ども自身の心象形成と関係が深く、知覚、経験したことがあらわれるといわれる。また、環境に対する態度をあらわし、自然物が絵の中に出現するということは、被験者の生活、生命体や非生命体への関心など、多面的な意味をもっていることを示す(文献9,10,11)とも言われている。
 以上から、農作業体験を通して、さまざまな生き物の成長や、動き、季節などを感じ取り、自然に対する関心が高まった可能性があると考えられる。
 
図3 体験前と体験後における絵の中の自然物の数
対象者 体験前 体験後
D
G
図4 「自然」という現場から思いうかんだ絵の例
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